自治体クラウド市場が始動

引用

長崎県が1月13日、同県で運営している「自治クラウドサービス」の今後の展開指針を発表した。最大のポイントは、県内だけでなく他県の自治体にも同サービスを積極的に提供していく方針を打ち出した点だ。こうした自治体発のクラウドサービス提案は、これが初めてのケースという。
 長崎県自治クラウドサービスは、電子自治体の実現に向けて同県が開発した「長崎県電子県庁システム」をクラウド方式で県内自治体にサービス提供するもので、2009年12月にまず電子申請の受け付けサービスを開始した。今後、公共施設予約、電子決裁、グループウェアなどのサービスを順次、提供していく予定だ。
 自ら自治クラウドサービスを行う意義について、同県は次の2点を挙げている。
 まず1つが「県民の利便性の向上と行政コスト削減効果の還元」。県内市町の電子行政を推進することにより、県民の利便性の向上を図ることが必要だが、財政面および人材面から市町が単独でシステムを構築・運用することは困難だとし、「県が低コストで開発したシステムをクラウド方式で提供することにより、県内のあらゆる地域で、安価な電子行政の実現を図ることができる」と説いている。
 もう1つが「地場IT産業の振興」。クラウドコンピューティングの出現によって全世界的に産業の集約化が進みつつある中、地方におけるIT産業が生き残るためには、ほかにはない独自性を持つことが必要としたうえで、「長崎県電子県庁システムは、ほかの自治体システムにはないユーザーの立場に立った高い操作性や、低コストで構築・運用できるという特徴を持っている」と強調している。
 さらに「そのような特徴を生かして他県の自治体での利用拡大を図ることにより、保守・管理業務の継続的な地場発注が可能になる。また、将来的にはシステムの運営を地場企業に委ねることにより、事業拡大にもつなげることができる」との展望を描いている。
 今回の発表で、いわゆる「外販」を積極的に進めることを打ち出した長崎県の電子県庁システムだが、実はすでに徳島県和歌山県が導入を進めている。両県とも、初期構築段階の委託や初期運用時のソフトウェア保守については、同システムの開発・運用に携わった長崎県内の地場IT企業の協力を得ているが、安定稼働後の運用・保守はそれぞれの地場IT企業に委ねたいという意向もあるようだ。
●生かしたい自治体発サービスの芽
 自治クラウドについては、総務省地方自治体の業務システムの効率化施策の1つとして、今年度の補正予算20億円を充て、2009年10月から今年3月まで実証事業を進めている。4月以降は実証事業の結果を踏まえて実運用への切り替えを図っていく予定だ。
 実証事業の狙いは、地方自治体に共通する業務について、業務システムを複数の市区町村で共同利用できるようにすることだ。これによって、自治体ごとに個別システムを構築・運用しなくても業務を効率よく遂行できるようにし、システムを構築したIT企業への依存や運用費の高止まりを是正することができると総務省では見ている。
 現在、実証事業は北海道、京都府佐賀県大分県、宮崎県、徳島県の6団体が総務省の委託を受けて進めており、電子申請の受け付けなどの住民向け業務、および人事給与や文書管理などの内部業務を行うシステムの共同利用を進めている。
 こうした総務省による実証事業が進められている一方で、自治クラウド市場は先に紹介した長崎県のように自らのサービスを積極的に「外販」していこうという動きも出てきた。
 業界関係者の間では、「自治体発のクラウドサービスの外販が盛んになってくれば、複数の自治クラウドが乱立する事態になって、効率性や行政におけるガバナンスの観点から、いろんな問題が生じてくるのではないか」と危惧する声もある。
 だが、自治クラウドサービス自体、始まったばかりだ。総務省の実証事業のような取り組みはもちろん意義深く重要だと考えるが、ここはひとつ、長崎県のように「ほかの自治体システムにはないユーザーの立場に立った高い操作性や、低コストで構築・運用できる」と胸を張って自らのサービスを外部に売り込むような自治クラウドが、もっと出てくることを期待したい。
 共同利用における効率の追求やガバナンスの問題は、同時並行で技術によって補えるところが少なくないはずだ。政府における取り組みでも「世界一便利で効率的な電子行政の実現を目指す」とうたわれているが、そのためにも自治クラウドにおいては、長崎県のような「自治体発」の芽もうまく生かしてもらいたい

 

面白い試みですが、最先端の分野に自治体が手を出すと、失敗しそうな気がしなくもないですね(苦笑)

でも、頑張ってほしいですね。